支配的な母親から自立された女性(後編)

Cさんは、まずは「母親の誘いに乗らない、誘わない」ことから始めました。母親との距離が近い人にとっては、「断る」ということはとても勇気がいることです。そして、多くの人は大変な「罪悪感」を感じます。
ですが、これは今までの慣れ親しんだ関係を変えるには必須です。おそらく、罪悪感の裏には、母親と離れて、一人の大人としていくていくことへの「不安」や「恐れ」もあると思います。そのため、不安や恐れの感情が膨れ上がった時に、思わず母親の誘いに乗ってしまったり、誘ってしまうこともあります。ですが、このとき冷静に「不安だったから誘ってしまったんだな」との認知を上書きすることで、「思わず」は減り、母親の誘いにも自然と「NO」が言えるようになります。
Cさんも徐々に「NO」が言えるようになり、6ヶ月後、Cさんは一人暮らしをすることにしました。一人暮らしを始めてから数ヶ月の間、母親との連絡を一切絶ちました。Cさんにとって、一卵性親子を抜けるのは、これくらいの強行姿勢を貫くことが必要だったのです。そして、母親のお誕生日をきっかけにまた、メールを交わすようになりました。
母親と心地よい距離感をつかめるようになった頃、Cさんにお伝えしたことがあります。
私「お母さんは、Cさんに口出しをするのは、愛からなんですよ。」
Cさん「(絶句。「この人、何言ってるの?」の表情)」
私「お母さんはとてもCさんのことを愛しています。だから、うるさくうるさく口を出すんです。」
Cさん「好きだったら、私にあんなに口出ししませんよ。嫌っているとは思わないけど、愛してるなんて、、、」
私「お母さんにとっての愛情表現は『干渉すること』だったんです。お母さんは干渉しているなんて思ってないですけどね。
考えてみてください、Cさんのあらゆることに口出しができるなんて、どれだけCさんのことを見ていると思いますか?お母さんは愛の塊なんです。その表現方法を間違えただけ。『愛してるよ』と直接に出せない、不器用な人なんですよ」
Cさん「そんな、愛なんて思ったこともありませんでした、、、」
母親との距離感をつかめたCさんは、とても納得されました。
現在でも、Cさんの母親はよく口出しします。でも、Cさんの捉え方は全く違います。「これはお母さんの愛情。だけど、この愛情は私には愛情として受け取れないので、お母さんにお返しします」このような感じで、口出しされても、冷静に自分の意見を言っているそうです。
今、Cさんは結婚され、子供も授かりました。実家ともとてもいい距離感で付き合っているとのことです。