「『ちょっと待って』は何分?言葉のズレをなくす方法」

クライエントさん(Aさんと仮定)の話です。

「関係がしっくりいっていない友人に『話をしましょう』と誘ったら、『いいわよ、◯曜日にうちに来て』と返事をもらいました。期待して行ったのですが、他にも人が来ていたんです。せっかく話をしたかったのに、全然話ができませんでした。どうして、他の人がいる時に私を呼んだのか、理解できなくて…」

Aさんの困惑はもっともです。ですが、同時に、「言葉のズレ」も感じたので、私は次のように答えました。

「Aさんは、友人との関係を深めたくて、お互いの気持ちをすり合わせるような『話し合い』をしたかったんですよね。でも、友人は『おしゃべり(雑談)を楽しみたい』と解釈したのだと思います。雑談なら、人数が多い方が盛り上がる、と思ったのかもしれません。『話をしましょう』の『話』って、人によって捉え方が違いますからね」

Aさんは「なるほど…」と深く頷かれました。

「実は、以前から何度か『話をしよう』と誘ったことがあるのですが、毎回、どうでもいい話ばかりで終わってしまって。なんでなのかな、と思っていたんです」

私は続けました。

「そういう方には、具体的に『何を話したいのか』を伝えることが大切です。『話し合い』と『おしゃべり』はまったく別物ですからね」

Aさんは少し考え込んだ後、「言葉の捉え方がこんなに違うなんて…」と驚いた様子でした。

私自身も、似たような経験があります。以前、友人に「ちょっと待ってね」と言われた時、私は数分のつもりで待っていました。でも、その友人にとっては『ちょっと』が30分くらいだったんです。あまりにも解釈が違いすぎて驚きましたが、それ以後、その友人と時間を決める時は、具体的に「◯時◯分」と伝えることにしました。

こうした言葉のズレが原因で、相手と噛み合わないことは意外と多いものです。「『ちょっと』を数時間と考えるなんて非常識だ!」と決めつけると、「この人は常識がない」という結論に至り、関係が終わってしまうかもしれません。でも、個人的には、それで関係性を終わらせるのはもったいない、と思うのです。
言葉の解釈やチョイスは、人によって違うこともある」——そういう視点で会話を見直してみると、誤解は減り、人間関係もスムーズになります。そんなことを考えさせられる出来事でした。