語学力より大事なこと。「伝わらない」は英語のせいじゃない!

「恋人に僕の言いたいことが伝わらないんです」
そんな相談を受けたのは、Aさん(30代男性)からでした。

Aさんの恋人は外国の方で、会話は英語。
ただし、英語は二人とも母国語ではありません。

Aさんは人間関係や生き方について学ぶのが好きで、その気づきを恋人と共有したい。
でも、英語力が足りず、細かいニュアンスが伝わらずに喧嘩になることもあるとのこと。

Aさんは、元英語教師の私に、「英語力をあげたいので、英語学習のポイントを教えてください」とおっしゃいました。
そこで、私は次にように答えました。
「英語学習のポイントはお伝えしますが、恋人が怒るのは、英語力の問題ではないと思いますよ

驚いたAさん!

昨日の喧嘩の内容を聞いたところ、
「セミナーで学んだ人間関係の話をシェアしようとしたけれど、うまく伝わらなかった」
とのことでした。
確かに、人間関係の概念を英語で説明するのは難しい。
でも、それが問題の本質ではないのです。

Aさんの「伝えたい!」という情熱が強すぎると、恋人には「押しつけ」に感じられてしまうことがあります。
本人は善意のつもりでも、相手の興味関心を無視したまま話すと、「自分の世界を一方的に話す人」と映ってしまう。

私はAさんにこう尋ねました。
「ところで、なぜ人間関係を学ぼうと思ったのですか?」
するとAさんは、
「恋人との関係をもっとよくしたくて。彼女が悩んでいたときもあったから役に立つかと思って」と答えました。

「では、それを彼女に伝えましたか?」
「……言わなくても、伝わってると思ってました」

ここが落とし穴です。 

本当に伝えたい思い
——「もっとあなたと仲良くなりたい」「あなたの力になりたい」
——こそ、言葉にしなければ伝わりません。

知識を話す前に、「その話をシェアしたくなった背景」を先に伝えるだけで、相手の受け取り方は大きく変わるのです。

言葉は道具であり、その奥にある“思い”こそが本質です。
これは英語でも日本語でも変わりません。
例えば、まったくアイドルに興味がない人が、まったく興味のないアイドルの話を恋人から延々とされたら
どう思うでしょうか? 聞く気が起きないですよね。それと同じです。

言語が違うと、「自分の語学力が低いから」と感じがちですが、大切なのは“語彙”ではなく“意図”です。
本当に伝えたいことほど、言葉にして明確に伝える必要があります。

「伝わらない」と感じたときこそ、自分が“本当は何を伝えたいのか”を見つめ直すことが、
コミュニケーションの第一歩になるのです。