月に一度か二度、気が合う友人とランチをします。しょっちゅう連絡を取るわけではないのに、会うと「それそれ!」と同じ所でうなずける。ふだん私は自分から誰かを誘うのが少ないのですが、この人とは「また会いたい」と素直に思えます。
先日、その友人に打ち明けました。
「尊敬するカウンセラーとつい比べてしまう。自分はまだダメだと思って落ちこむ」と。すると、彼女は静かに言いました。「今は、まだ知らないだけだよ」。その一言で、胸のつかえがスッと取れました。
たしかに私は経験も知識も足りない。でも、それは「欠け」ではなく「これから増える分」。友人は続けます。
「その尊敬する人も、知っていることをそのまま伝えているだけ。たくさん知っているだけ。なら、あなたも知っていけばいい」。比べて落ちこむ時間を、学ぶ時間に変えればいいのだと気づきました。
相談で出会う人たちも、よく似たところで足が止まります。
たとえば、SNSで人気の発信者と自分を見くらべて落ちこむ人。けれど、その人は毎日コツコツ投稿し、試行錯誤をくり返してきたはずです。今日の自分は、まだその回数をこなしていないだけ。
また、資格をいくつも取っている人を見て不安になる人もいます。でも、最初の一枚目の合格証は、だれにでも「ゼロから一」でした。まず一歩。次の一歩。そうやって数は増えます。
料理で言えば、いきなりフルコースを作ろうとせず、まずは一品を丁寧に仕上げる。うまくできれば自信になり、次の料理に挑戦できる。学びも同じです。
「知らない」は、恥ではありません。未来の余白です。
知らないからこそ、試せます。聞けます。まちがえても、やり直せます。私も、できていない所に目が行くたび、こう言い直すことにしました。「私は今、伸びしろの途中にいる」。この言い方に変えるだけで、体が軽くなります。
そして、率直に伝えてくれる友がそばにいることは、とても心強い。人は自分の欠けて見える所に目が行きがちです。けれど、信頼できる誰かが「今はまだ知らないだけ」と言ってくれると、視線は未来に向きます。
私もクライアントに、同じ言葉を手みやげに渡したい。「足りない」ではなく「これから増える」。
その視点が戻った日、私は落ちこみから抜け出し、前を向いて進めるようになりました。