何かを身につけたいと努力しても、その成果がすぐには見えてこないことはよくあります。
マラソン選手がフォームを直しても、最初はタイムが落ちることがあります。英語の勉強で単語を増やしても、リスニングの点が下がることもあります。料理家が最高の出汁を求めて研究しても、しばらくは味が安定しないことがあります。
この「すぐに結果が出ない時期」は、誰にでも必ず訪れます。実はこれを「成長曲線」と呼びます。努力はすぐに成果として表れず、長い間なにも変わらないように見える。でもある時点を境に、一気に成果が花開く。その形を線で描くと、しばらく横ばいが続いたあとに急に上昇していく曲線になります。
そのあいだ、人は不安になります。
「やっても無駄なのかな」
「やり方がまちがっているのかも」
「続けても意味がないのでは」
そんな疑いが頭をよぎります。
でも実際には、小さな力が少しずつ積み重なっています。器に水を一滴ずつ落とすように、目には見えなくても確実に増えている。そして、ある日ふと器から水があふれるように、「あ、努力が実を結んだんだ」と気づく瞬間がやってくるのです。
たとえば、体調を整えたいと始めた毎日のストレッチ。最初の数週間は変化がなくても、半年後にふと体が軽くなっている。英会話の練習も、毎日5分声に出すだけでは何も変わらないように見えても、旅行先で自然に言葉が出て自分でも驚く。家の片づけでも、1日10分続けていたら、気がつけば部屋も気持ちもすっきりしていた──。そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
大切なのは「見える形」にして自分を励ますことです。
ストレッチをした日はカレンダーに丸をつける。英単語を覚えたらシールを貼る。料理で工夫したことをノートに残す。ほんの小さな記録でも、「私は続けている」と確認できることが心の支えになります。
さらに、一緒に支え合える仲間や、少し先を歩いている人の存在も大切です。「しんどいのは今だけ」「続ければ必ず花が咲くよ」と声をかけてもらえるだけで、あきらめずに進む力になります。
成長曲線を知っていると、「結果が出ないのは失敗ではない」と思えます。器に水をためるように、小さな一滴を重ねること。それがいつか、人生を大きく動かす力になるのです。