聞きすぎて疲れるあなたへ——心を守る小さなコツ

あなたは、人から相談を受けることが多い方ですか?

気がつくと誰かの話を聞いてあげていて、「頼れる人」として周りに人が集まる。
そんな人はとても優しく、人思いです。
でも、その優しさが自分をすり減らしてしまうこともあります。

たとえば、友人の家庭の悩みを聞いているうちに、自分まで胸が苦しくなる。
職場の愚痴を聞いた後、なぜか体が重く感じる。
話している間は夢中でも、帰り道でどっと疲れが出る。
まるで相手の悲しみや怒りを、自分が吸いこんでしまったような感覚になってしまう。

そんな人におすすめなのが、「透明なアクリル板を置く」というイメージです。

子どものころ、「バーリア!」と言ってバリアを張る遊びをしたことはありませんか?
それと同じように、相手との間に、薄い透明の板をそっと立てるように想像します。
顔は見えるし声も聞こえるけれど、感情や重たい空気はアクリル板の向こうで止まります。
あなたの中には入ってこない。

最初はうまくいかなくても構いません。
「私は今、アクリル板のこちら側にいる」と意識するだけでも十分です。
この“心の距離”をとることが、自分を守る第一歩になります。

私自身、人ごみが苦手で、デパートや駅で気分が悪くなることがよくありました。
「性格だから仕方ない」と思っていたのですが、
この方法を試すようになってから、本当にラクになりました。
混雑した場所で「よし、アクリル板を立てよう」と思うだけで、
人の声や表情に引きずられにくくなったのです。

たとえば、職場で誰かがイライラしていても、
その空気にのまれず、自分のペースを保てるようになります。
家族の機嫌が悪い日も、必要以上に巻き込まれなくなる。
「自分の感情は自分のもの、相手の感情は相手のもの」
この線引きができるようになると、人間関係はぐっと楽になります。

知人の女性も、家族の悩みを毎晩聞いては疲れきっていました。
でも、この“アクリル板”を意識するようになってから、
「話は聞くけど、感情までは受け取らない」と思えるようになり、笑顔が戻りました。

人の痛みに敏感であることは素晴らしい才能です。
でも、優しさの中に“自分を守る境界”を持つことも大切です。
それは冷たさではなく、健やかに人と関わるための思いやり

人の話を聞くときも、人の中にいるときも、
あなたの周りにはやさしい透明の板がある。
そう思うだけで、心も体も軽くなります。
無理をして寄り添わなくても大丈夫。
あなた自身を守ることが、いちばん大切なやさしさです。