過去を幻想化する

「過去の出来事を幻想化する」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?過去のとても苦しい体験をした時、その体験があまりに大きな傷となって、その傷が癒されていないまま生きている方は、多くいます。それは、実際に大怪我をして、傷口がぱっくり開いているのに、開けたままにしていることと、なんら変わりはありません。

ただ、過去といっても、ほんの数年前ではなく、15年も20年も前のことを、鮮明に、鮮やかに、頭の中にカラー写真やビデオ機能があるのかしら?と思うくらい、はっきりくっきりと覚えているのです。

 

そして、それは日常的に起こります。全く関係ないシーンでも、意味づけが起こって、フラッシュバック的に蘇ってしまう。それは、本当に苦しいことですし、フラッシュバックが起こるたびに、傷口は開いていってしまいます。そして、その傷は永遠に治ることはないかもしれない、という絶望感でいっぱいになってしまうのです

そんな時に有効な方法は、「過去を幻想化する」ということです。20年前に起こったことを鮮明に思い出すのは、20年前の出来事に命を吹き込んでいるからです。とても苦しい記憶なのにもかかわらず、とても大事に、まるで忘れてはいけないことのように。なので、20年前の事実、自分の状態や感情を客観的に捉えて、「今の私」との検証比較を行います。

20年前の私と今の私、全く同じ状態という人はいるでしょうか?・・・いません。まず、年齢が違います。状況は大きく変わっている場合が多いです。そして、このように過去のことを延々と思い出される方には、真面目で誠実な方が多いので、20年前に起こった出来事には至らないように努力されているのです。

つまり、「幻想化」とは「過去を客観的に捉える」ということです。この作業を1つ1つしていくことで、過去の出来事をフラッシュバック的に思い出して、苦しむことは、格段に減っていきます。