へりくだったように見える相手の対応の真意

Qさんとその同僚との間に起こった話です。

 

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Qさんには、同じ職場にQさんより年齢が少し上の同僚がいます。その同僚は明るい雰囲気の女性で、仕事は丁寧なのですが、どちらかというとスローペース。一方、Qさんはとてもよく気がつき、仕事もスピーディーでテキパキこなします。在庫不足や商品陳列の乱れ、など、いつも先に気がついたのはQさんの方です。そのため、いつしか、Qさんは年上の同僚に「◯◯してください」と指示を出すことが多くなりました。また、年上の同僚は時々、指示したことを期限内にし忘れていたこともあり、「◯◯への注文、できました?」と「できているのかしら?」という気持ちを含みながら、会話するようになっていたとのこと。ただ、言葉を丁寧にすることは心がけています。すると、いつからか、同僚は、「◯◯しました!」「△への注文すんでいます!」「◽️社から電話がありました!」など、Qさんの顔を見るなり、報告するようになりました。Qさんが出社すると、年上の同僚はあいさつもそこそこに報告しにきます。そんな同僚に対して、Qさんは「えー、なんでいきなり報告なの?あいさつが先でしょう!」と口には出しませんが、思っていました。

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ここまで話を聞き、私はQさんに問いました。

私:「どうして、同僚はQさんにあいさつもせずに報告したんだと思いますか?」Q さん:「とにかく、報告するのを忘れないように、その一心だったと思います。理由ですか?分かりません。あいさつくらい、して欲しかったんですよね」Qさんはなぜ、同僚があいさつもせずに報告したのか、ずっと謎だったようです。

私は次のように言いました。「同僚は、Qさんに仕事面で負けてるって思ってるんです。負けてるって言葉が適切でなかったら、敵わないって思っていると思います。だから、Qさんに報告するんです。報告することだけは遅れずにしよう、と頑張っているんだと思いますよ」

すると、Qさん、「仕事で負けてる、、、?そんなこと、考えもしなかったです。だって、その同僚はいつも笑顔で、感じがよくて、いい人ですし、、、」。

 

そこで私は、「仕事のみのことを考えてみてください。いつも在庫がないなどに気づくのはQさんですよね?Qさんはよく気がついて、仕事のスピードも早いですよね。きっとその同僚は自分はできない、情けないって思っていると思いますよ。Qさん、勝っている方は気づかないんですよ」と言いました。「だから、勝っている方は、同僚に感謝の言葉を言わなくてはいけないんです。報告してくれてありがとう、って。そして、でもね、私も出社したばかりで頭が回っていないから、お茶飲んで一息ついてもいい?って。すると、同僚は、はっとします。焦りすぎていたなって」

Qさんの謎は解けたようでした。「勝った、負けた」という言い方が適切かどうかは分かりませんが、仕事でも、エネルギーでも、地位でも、勝っている方は、相手に勝っていることを自覚する必要があります。そのことに気づかなかったり、勝っていることを認めなかったりすると、負けている相手の気持ちが全然理解できず、双方の溝は深まるばかりです。勝っている方は、負けている方の努力を認め、感謝の言葉を口にする。すると、負けている方は自分本来の力を取り戻し、その人らしく力を発揮することができます。それで、仕事ができる・できない状態が変わるわけではないですが、それぞれを認める状態になります。それが双方が歩み寄る第一歩です。