身近で親しい人にほど、自分の感情や気持ちは言葉で伝えることが必要です。ただ、伝えることに慣れていない人は、状況を話すことで、感情や気持ちも伝えたつもりになっていることがあります。
ある女性(仮にJさんとします)の話。Jさんは毎年、彼と郊外のイルミネーションを車で行くのが恒例になっています。大勢の人が集うので、駐車場は混み合い、どうしても帰るのが遅くなってしまいます。Jさんは楽しみなのですが、何時間も車を運転する彼のことを「心配」して彼に次のように伝えました。
Jさん:「車に長時間乗るのは大変だから、電車にしようよ。しんどいし」 彼:「大丈夫。車の運転するの好きだよ」 Jさん:「でも、途中でトイレに行きたくなったらどうするの。困るよ」彼:「行きたくなったらすぐに言って。なんとかするよ」Jさん:「なんとかって、、、」
このように最後は、彼に押し切られる形になってしまう。でも、Jさんなりに伝えたいことは言っているのでこれでいいのかな、と思いつつ、でも、どこかすっきりしない気持ちがある。そんな感じのようでした。
私はJさんに尋ねました。「Jさんが彼に一番伝えたいことは何ですか?」するとJさんは次のように答えました。「彼が長時間、長距離を運転するのが心配なんです。私はただ座っていればいいですけど、長時間の運転ってしんどいじゃないですか?けど、彼にいくら言っても、大丈夫、大丈夫としか言わなくて、、、」
ここでJさんに再度、質問しました。私:「彼に心配だって伝えましたか?」 Jさん:「心配、という言葉では伝えてないです。でも、伝わっていると思うんですけど。伝わってないですかね??」私:「Jさんの先ほどの会話はすべて状況説明です。だから、彼には『心配している』ということは伝わっていないと思いますよ」Jさん:「伝わっていないですか?そうですか。気持ちを表す言葉で伝えないと伝わらないんですね。今度から、そう言ってみます」
この後、Jさんは彼に「長距離、長時間を運転するのは疲れるだろうから、心配だ」ということを伝えました。彼はJさんの気遣いにとても感謝して、その上で「楽しい思い出を一緒に作りたいから、行こうよ。運転するのは全然平気だよ」と答えたそうです。Jさんは彼の真意を聞けて、とても幸せな気持ちになって、とても嬉しかったと思ったそうです。そして、彼のことを今まで以上に、大切な人だと再認識できたとのこと。
状況だけを説明するのではなく、自分の気持ちや感情を言葉にする。相手との会話をちぐはぐなものにしないためにも、本当に言いたい気持ちや感情が伝えることはとても大切です。